ブルータリティ

ブルータリティ

*この作品はDead by Daylihtに登場するキラー『トラッパー』を題材とした二次創作作品となります。

-何者かによる通報により現場に向かうと、マクミラン・エステートにて所有者であるアーチー・マクミランの遺体が倉庫の地下室で遺棄死体として見つかった。息子であるエヴァン・マクミランは莫大な会社の資産とともに行方不明となっている。現在大量殺人ならびに死体遺棄の容疑で指名手配中である。我々は犯行の解明のため現場検証を行った。偶然地下の坑道から犠牲者と思われる日誌らしきものが見つかった。以下それを引用しつつ証拠資料を記載する。-

私の名前はトム。

幼なじみであるボブ、ジム、そしてエヴァン達と「マクミラン・エステート」で働いている。
マクミラン・エステートはエヴァンの父であるアーチー・マクミランがシアトルで経営している鉱山会社の一つである。シアトルで最も利益を生んでいる鉱山である。地元に住む私は当然のように地元の有力企業であるマクミラン・エステートに就職し働くこととなった。

「エヴァン、おはよう。」
「ああ、お、おはよう。」
いつものように挨拶を交わす。
エヴァンは図体がでかい割に気持ちが小さい。
優しいとも言えるし、おびえているとも取れる。
あの残虐な父親とは違って。

「いいか、死ぬまで働け!ウジ虫ども。口を動かす暇があれば手を動かせ!お前らの命に価値はないが、お前らが生み出すものには価値がある!」
これがアーチーの口癖だった。歯向かうものは痛めつけられ従順となる。いつものことだった。

病気に苦しむ労働者が退職を願い出たことがあった。彼は病気に苦しみ、肺は真っ黒に汚れ、胃は過度のストレスで酸にやられていたそうだ。睡眠時間も不足していることからふらふらと立つのがやっとだった。男はアーチーの近くで倒れ込むが気にもとめず男の腹に蹴りを入れ、鉱山から運び出すようにエヴァンに指示を出す。エヴァンはうつむきながらその男を引っ張り出した。傍目で見て倒れた労働者に対して同情を見せてはいたが、それを上回る父親への恐怖心、それが彼を動かしていたように思えた。

「僕はいつも聞かされるんだ、あの話。」
「あの話?」
「ああ。父さんが叔父さんと狩りをしていると巨大なグリズリーが現れて叔父さんの腕を引きちぎって頭にかみついたらしいんだ。そこに父さんがグリズリーの背中に飛びついて何度も、何度も刺して殺したらしいんだ。胃袋を引き裂いて頭を取り出したって。でも話すたびに話の内容が変わっているし、僕にはその話が本当なのか分からない。」
エヴァンは考え込んでいるようだ。
私も黙って聞いていた。それもそうだろう。グリズリーが現れて倒せる人間なんてそんなにいないだろう。その話の意味はエヴァン自身もわかっているように、それは現実であってそうでないものだ。

年の近かった私達はエヴァンとよく話をした。
エヴァンは口数こそ少なかったけれど、どこか私達に気を許していたらしい。
もっとも片方は御曹司、私達はしがない労働者の立場だったが。
私達はエヴァンが父親に隠れてよくスケッチをしているのを知っていた。
何を書いていたのかは知らないが、おそらく父親に対する無言の抵抗、もしくは本人も意識していていない無意識下での抵抗だったのかもしれない。
あの父親にそんな趣味があるとも思えなかった。
おそらく知ってしまったとしたらスケッチを捨てられ教育、という名の暴力が振るわれるだろう。
私は知らないふりをしていた。
それが私が可愛そうなエヴァンにしてやれる唯一の優しさだった。

ある晩のことだった。
私達は作業を終え仲間達と酒を飲んでいた。
ふらりとアーチーが姿を現した。
「よう、お前ら。最近作業をきちんとやっているようじゃないか?」
「は、はい。アーチー様。言われたとおりにきちんと作業をこなしています。」
ボブが答える。
「いつも私の息子のエヴァンと仲良くしているそうじゃないか。」
「はい。仲良くさせていただいています。」
私はそう答える。
アーチーはじろりと私達をなめ回すように見て、
「だが、隠し事はいけない。息子の何を隠している?」
いきなり座っていたジムの腹を蹴り飛ばした。
勢いでジムは床に転がる。
「な、なんのことでしょう?」
「とぼけなくていいんだぜ。なにか息子が俺に隠れてこそこそと作業しているのは知っている。教えろ。」
否定を許さない命令だった。
「お、恐らく何か絵を描いているのだと思います。」
「絵だと?あの軟弱者がする趣味か?」
「は、はい。」
ボブは飼い主にすがる犬のようなまなざしで慈悲を請う。
エヴァンに対する申し訳無さよりも恐怖心が勝っていた。
「なるほど。これは教育が必要だな。教えてくれてありがとう。これで機嫌を直してくれ。」
満足気にアーチーはつぶやく。
邪悪な笑みを浮かべて。
無造作に床にカネが投げられる。
俺達はありがとうございます、と頭を下げそのお金を受け取った。一抹の申し訳無さはすぐに和らいだ。これは従順に主人の命令を聞いたご褒美だ。カネがなければ生きていけない。

その出来事の後エヴァンに何があったのかは知らないが、人が変わったようだった。
以前感じていた父親への恐怖心からまるで神を見つめるような崇拝する姿勢に変わっていた。ただ今私達と年の近い友人として接するのでは無く、ウジ虫をどう使い倒すか、そういう父親と同じ立場に変化したことだけは確かだろう。

今私はこうして日記の続きを書いているがトンネルの入り口が塞がれ、食料も水も空気も尽きるのは時間の問題だ。これは純真だったエヴァンを守ってやれなかった私達への罰なのかもしれない。二人の親子の狂気の果てにこのマクミラン・エステートがどうなるのか。これから死にゆく私にはどうでもいいことだ。あたまがぼんやりして(ここで文が途切れている。)

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