【投資】ファイナンス理論から個人投資家におけるαを探る

【投資】ファイナンス理論から個人投資家におけるαを探る

α。投資において実に甘美的な響きである。市場平均のリターン(インデックスファンドなどに代表される)がβなのに対して、それを上回るリターンのことをαと呼ぶ。

著名投資家ウォーレンバフェット氏率いるバークシャーハサウェイもここのところ市場平均のβを上回るリターンを生み出すことに苦しんでいるようである。しかしながら市場環境や運が絡むとは言え、超過性の利益即ちβの果実を探し求めているのは個人投資家もとい全ての市場参加者の願いであろう。自分もその一人である。

投資は良く不完全性情報ゲームと例えられる。例えば将棋や囲碁などルールが固定化され、定石が存在するゲームは完全情報ゲームとされ、ポーカーや麻雀の様に偶然的要素が絡みやすく、なおかつ確率的アプローチが効きやすいゲームを不完全性情報ゲームよ呼ぶ。

テキサスホールデムに代表されるポーカーの変数式は以下の通りである。

R(得られるチップ)=ポジションサイズ(プレイヤーの賭けるベットサイズ)×役の強さ(ポーカーの場合確率計算が事前に成されている)×プレイヤー心理(プロポーカープレイヤーのダニエル・ネグラヌ(Daniel Negreanu)さんなどは、この部分が非常に優れており、軽い会話やポジションサイズなどでかなりの推定ができる)×リスク管理(引き際と押し際、ブラフなど)である。

この式を投資に置き換えてみると、

R(得られるマネー)=資金量×分析力×行動力とわりとシンプルにまとまる。

ポーカーと投資の最大の違いは、ポーカーが役の強さにおける期待値がはっきりしていることに対して、投資においては計算をいくら重ねても曖昧な期待値しか出せないことが最大の違いであると思っている。この期待値の曖昧さにある意味収益機会がかかっているとも言える。

最近読んだファイナンス理論全史によると、現段階における投資理論の結論としては市場はまあまあ効率的であり、時として非効率的になるという結論が正しい感じである。その中で理論的背景を持ち、実績を上げている投資手法は以下の分類だそうだ。

銘柄選択
リスクプレミアム
トレンドフォローまたはコントラリアン(順張りと逆張り)
非対象の収益機会(非対称の賭け)
アービートラージ

これを踏まえて、個人投資家が取り入れやすそうな戦略とは何だろうか。一見銘柄選択がやりやすそうにも感じるが、分析の広さと深さを考えると個人投資家としては限界がありそうな気もする。特に空売り系の銘柄分析だと順調そうな企業のほころびを見つけて売り圧力をかけて収益を得るのが正攻法だと思われるが、ポジションサイズの市場に与える影響力の問題や分析の精度や情報の賞味期限など色々な問題点が見つかる。

個人的にはかっこいいと思っている非対象の収益機会、これはリーマンショックなどに代表される不動産価格と個人における住宅ローンの返済率などの滞りの情報から売りポジションを取って起きた収益機会などを指す。派手好きな自分としては非常にかっこよく映る反面、ブラックスワンと呼ばれるようになかなか収益機会が訪れることもないことと、やはりポジションサイズの問題がある。ジョージソロス氏の名前を世間にとどろかせたポンド危機もヘッジファンドの売りポジションが積み上がっていたからこそトレンドが発生したようにも感じる(その当時英国政府はポンドの買い支えに金利の大幅な引き上げを行いトレンドを止めようとした)なのでこの戦略も個人投資家のポジションサイズを考えると非合理的だろう。

ここで考える材料としてもう一つ著名投資家のCIS氏の存在を考える必要がある。著書を読ませていただいた感じCIS氏はモメンタム投資、すなわち市場の流れに身を任せるトレンドフォロー型戦略をとっていた。もちろん全てではないだろうが、基本戦略と言っていいだろう。実は先ほど例示したポンド危機がなぜジョージソロス氏が成功したか興味があり色々調べてみたのだが、まずソロス氏はデータ分析によりポンドの価値が実際の価値よりも高く見積もられていることに気がついたそうだ。次に市場で小さなポジションで売り買いを試してみて反応を見て、市場評価としてもポンドの買い圧力が弱く感じた。そこから売りのポジションを積み上げて下げトレンドを形成した模様だ。即ち、この段階で個人投資家は下げに転じた際にトレンドにのるだけで良かったのである。前述したCIS氏は株式のチャートなどの情報からクジラとよばれる機関投資家の流れが分かるそうだ。(同様のことをテスタ氏も語っていた。)すなわちポーカーで言うところのプレイヤー分析によるモメンタム投資によって超過収益を稼いでいるとも言えるだろう。

よって個人投資家におけるαとは精緻な分析よりも、市場参加者の動きやチャート、ニュース等に気を配ることで生まれるトレンド仮説を自らのポジションで立証していくということにつきるのではないだろうか?もちろんブラフも含まれているし、ランダム要素も含まれているためやはり確率論にはなってしまうだろうが、これこそが我々個人投資家が取り得るαな気がしてならない。このαの面白いところは個々人によって取り得る印象と仮説が異なることである。事実は一つにしても真実(解釈)は人の数だけ存在する。そんなことをファイナンス理論を学んで思った。名著だと思われるので興味のある方は是非お読みください。

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